平明であるが、単純ではない。
そこにはさまざまな事象との出会いを超えてきた作者の静謐な心がある。
納得としてうたうとはそういうことだ。
馬場あき子(帯より)
【歌集より】
あるがまま感ずるままに振る舞へば猫になりたる心地するべし
酔ひさます冷気に仰ぐオリオンの右肩の星消えなむと言ふ
プロポーズされたる夢に目覚めたり昨夜のドラマ艶やかなりし
熟れ過ぎし無花果の実の食感にカルタゴ国の興亡思ふ
狼を真似るガイドの遠吠えはアルゴンキンの湿原に消ゆ
ユニセフのポスターの子は吾を見し渇きと飢ゑと臭気を思ふ
2019.2.19刊
かりん叢書
四六判上製/204頁
ISBN 978-4-86272-598-1