心にふれる、という言葉がこんなに似合う歌はないと思う。
──東直子(歌人)
もといくんの歌集の中で暮らしたい ゆくてのシャツを乾かしながら
──枡野浩一(歌人)
2010年から2019年までの
短歌作品346首を収録。
【歌集より】
ほっといた鍋を洗って拭くときのわけのわからん明るさのこと
乗るたびに減る残額のひとときの光の文字を追い越して行く
菜の花を食べて胸から花の咲くようにすなおな身体だったら
三基あるエレベーターがばかだからみんなして迎えに来てしまう
ないような夜と海とのあわいからちぎれる波に洗われていた
恋人をまじえて水炊きをかこむ呼びようのない暮らしの夜だ
夕闇にしずむこの世のおみやげに吊るしたシャツは風が抱き取る
【著者について】
山階 基 (やましな・もとい)
1991年広島県に生まれる。
2010年 短歌を書きはじめる。
2016年 第59回短歌研究新人賞次席
2017年 未来賞受賞
2018年 第64回角川短歌賞次席、第6回現代短歌社賞次席
2019年 歌集『風にあたる』刊行
2019年からイベント「屋上と短歌」を東京・西日暮里「屋上」と共同で不定期開催。
麻川針(あさかわ しん)名義で組版・デザインを手がける。
早稲田短歌会出身
未来短歌会「陸から海へ」出身
2019.7.23刊
四六判変型152頁
ISBN978-4-86272-618-6