今度は,
「普通の歌集」を作ろうと思った。
「短歌ニューウェーブ」から30年。
原点に回帰し、区切りをつけ、あらたな地平に踏み出す。
55歳から59歳までに創作した476首を収録する第十一歌集。
【歌集より】
波のうまれるところを想う混乱のひかりが俺を生かし続けて
アトミックボム、ごめんなさいとアメリカの少年が言うほほえみながら
ただひとり俺によく似た死者の待つプラットホームあり細長いプラットホーム
どこにでも今があるってたのしいぞジンジャーエールを飲みほす感じ
かもしれないドアの向こうに人がいるかもしれなくてすごく光った
文字は言葉に背いて紙の家に棲むあなたのむねのようなくらがり
火はひとり炎はふたりふりしきる花びらをてのひらにあつめて
装幀=鈴木成一デザイン室
2019.9.10刊
A5判上製/208頁
ISBN978-4-86272-625-4