〈歌集より〉
母の繰り言聞き流しいし遠き日よ憂いもつ身となりて身に沁む
雨上りの夕闇のなか蛍火の寄りゆくふたつ 母と弟
落人の厳しさ弛むひとときぞこきりこの唄ささら鳴らして
憂いなど告げておるらん壁に向き夜更けを友にメールしている
老いし犬が子牛のような夕日影巨人となりし私に添いて
核実験なしたる国へと続きいて魚鱗の雲の白く広がる
歴史を感じさせる町、飛騨高山に住まう著者が過去の多くの人とのつながりを顧みつつ、
四千首を超える作品から選んだ第一歌集。
解説・大塚寅彦
中部短歌叢書
A5判/196頁
ISBN978-4-86272-645-2
C0092 ¥2500E
定価2500円(税別)