他者の道を歩くことはできず、自らの道を歩むよりほかにない現実を
投影してしまう詩形としての短歌、そのような短歌への親しみと畏れを、
本歌集を編むことによって改めて抱くことになった。
(あとがきより)
現代短歌新人賞受賞の『アシンメトリー』から七年となる待望の第二歌集。
〈歌集より〉
月光はスライスアーモンドより脆く身じろぐたびに割れてしまった
冬がいい桜並木の静けさを独り占めして歩くのならば
ガラス戸に翳り映れるわが顔もわが顔 鳩が白く過ぎりぬ
フード付きパーカーはおる季となり知らずに積もる後ろの時間
遊歩道ぐるりと廻らせ手賀沼は確かめておりおのれの広さを
じわじわと四十代にも馴染みおり器に牡蠣の殻積み上げる
かりん叢書
2017. 7.1刊
四六判/176頁
定価2,750円(本体2,500円)
ISBN 978-4-86272-532-5