斎藤茂吉記念館館長として茂吉をめぐる人々の情に触れ、ときに蔵王の樹氷林に向かう。
またある時は、大都会のビル群のはてい沈む日に啓示を受け、街の灯に憩う。
グランドフィナーレの心境に立つ作者七十代後半の作品群。
【歌集より】
十六夜の月中空に光りつつ雪ふりをれば人をしのばす
敗戦国の少年としてかたくなに育ちきいまだに消ゆることなし
街の底泡だつごとく点り来てつづまりに人は夜の灯に憩ふ
上山の茂吉の蛍とぶ道を恋しき光身に沁みあゆむ
佐太郎の生年越えていよいよに独りとぼとぼと遠き道行
2017.10.5刊
四六判/204頁
ISBN 978-4-86272-540-0