大航海時代の世界地図には
記されていない国
〈ジパング〉からの旅人である「私」は
ベネチアで
FUKUSHIMAの
名を耳にする──。
被災ののちの
日本の原像を求めて訪ねる
東北、南島、
そして老いゆく母
静かな中に勁さを秘めて
いま、自在にうたう
【歌集より】
シャワー浴びるわたしは寂しい巨大花スマトラオホコンニャク今夜咲かむとしつつ
ベネチアに見てゐる古地図日本のあらかじめなくこののちもなき
列島に日本人のみ残るといふあの舟に吾は帰るべきなり
白秋がせし恋どれも深傷なり摺られながらに林檎かをりぬ
わが裡のしづかなる津波てんでんこおかあさんごめん、手を離します
2017. 11.10刊
かりん叢書
四六判/184頁
ISBN 978-4-86272-546-2