明るさよどこにも春の気は満ちて聖堂まで誘ひたまへ(歌集より)
──ノートルダム大聖堂の、薄暗い空間に足を踏み入れたときの
高揚感は、今でも時折よみがえってきます。 ──あとがきより
「ほほゑみに肖てはるかなれ霜月の火事のなかなるピアノ一臺」
(塚本邦雄『感幻楽』)に否応もなく魅かれるという著者が詠む
《ノートルダム》、『歳月の気化』に続く第八歌集!
【歌集より】
美しいリラの季節もあつたのだその花びらは四枚に裂け
訴へてくるものだけがもしかして木の実だつたといふことなのか
切り株をもう何年も見てゐないそこにつばさを休める人も
冬の蝶はらりと過ぎぬ思想にも裏面があると思つてもいい
休息のための取つて置きの部屋 右に左に夏鳥来たれ
装幀=間村俊一
2022.4.30刊
四六判変型/160頁
ISBN 978-486272-701-5