『シジフォスの日日』から四年余りの日々に詠まれた333首を収めた第五歌集。
「人々と星の距離ほども隔てられたような孤独のなかで、人と会いたい、
語りたいという渇望で体がいっぱいになったとき、短歌は私の言葉を
掬い取ってくれた。」
「どんな時でも、言葉は私たちの傍らに小さな希望のように寄り添って
くれているのだ。」 (あとがきより)
栞=小池光/森山恵/堀田季何
【歌集より】
わが額に置かれし友の緑の手ひと滴づついのちを注ぐ
三人の子らを忘れし母が歌ふ「主われを愛す」オルガンにのせ
一年と九箇月ぶりの車椅子庭にコスモス空に夏雲
もう二度と乗れぬと思ひし車椅子身体が縦になるを驚く
淹れたてのコーヒーが胃に落つるときふつふつと生の実感のぼる
【著者プロフィール】
有沢螢(ありさわ・ほたる)
1949年 東京生まれ。六歳より作歌
1976年 聖心女子大学を経て、早稲田大学大学院文学研究科日本文学修士課程修了
2000年 歌集『致死量の芥子』上梓
2001年 「短歌人」入会
2007年 歌集『朱を奪ふ』上梓
2011年 歌集『ありすの杜へ』上梓
2015年 撰集『有沢螢歌集』上梓
2017年 歌集『シジフォスの日日』上梓
2020年 エッセイ集『虹の生まれるところ』上梓
【書評】
♦2022.7.18 長崎新聞「郷土文芸」に大松達知氏「生きることへの敬虔さ」掲載
2022.5.25刊
四六判上製/256頁
ISBN978-4-86272-702-2