地球見(ちきゅうみ)  春日いづみ歌集

「短歌研究」連載作品を中心に編まれた第五歌集
この時期、『聖書』の翻訳というかけがえのない仕事に携わり、
また、長く関わった岩波ホール閉館に衝撃を受ける。
社会の大きなうねりの中で、著者は自身と世界を静かに見つめ続ける。


【歌集より】

安全はいづこにもなく明日昇る太陽だけが標と思ふ

この度も消去法にて選びたる一生(ひとよ)の大事を ねえ、羊雲

クルド語の映画にサヌレとふ女の子その名「国境」の意味と知りたり

ひたひたと禁教の世の近づくと思ふことあり歩幅の縮む

掌に載るほど小さき男の像 戦争は人を縮めゆくもの

絵本には地球見をする家族をり三十年後の月の暮しに

廃墟画はなぜに美し森閑と雲をわかせてひかり満ちをり

何待つか知らねど今宵は前夜なりさやゑんどうの筋を剝きつつ



【著者プロフィール】
春日いづみ(かすが・いづみ)
1949年 東京生れ
2001年 「水甕」入会
2005年 『問答雲』(角川書店)にて第12回日本歌人クラブ新人賞
2009年 『アダムの肌色』(角川書店)刊行
2013年 現代短歌文庫『春日いづみ歌集』(砂子屋書房)刊行
2014年 『八月の耳』(ながらみ書房)刊行
2018年 『塩の行進』(現代短歌社)にて第46回日本歌人クラブ賞
2022年 エッセイ集『シネマそぞろ歩き』刊行

現在、歌誌「水甕」代表、編集人。現代歌人協会理事。明治記念綜合歌会委員。NHK 学園短歌講座講師。NHK 新介護百人一首選者。「カトリック新聞」短歌欄選者。『聖書 聖書協会共同訳』諮問委員。日本歌人クラブ参与。日本現代詩歌文学館振興会評議員。日本文藝家協会、日本ペンクラブ、各会員。


装幀=岡 孝治


2022.8.15刊
四六判並製/240頁
ISBN 978-4-86272-715-2
販売価格 2,500円(税込2,750円)

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