新しき過去   栗木京子歌集

          
「今」という瞬間は刻刻と通り過ぎ、
更新されて「新しき過去」となる。
その「新しき過去」に、永遠のかがやきを発見するべく、
感受性や認識をいつも柔軟に保っていたい。
そうした著者の願望が歌集名となった──。



【歌集より】

葉の間にいちやうの緑き実の見えて新しき過去かがやくごとし
 
紅葉がアルファベットのやうに散る道を歩みぬ黙してふたり

苦しいと言はず必死に呼吸して必死の尽きしとき母逝けり

四つ星の囲むちひさな菱形が蟹座にありて春の入り口

はとバスの黄色い車体を街に見ずただ新緑のさやぐ東京

どこまでがフェイクニュースか判り得ず犬の鼻、鳥の目もたぬわれには


【著者プロフィール】
栗木京子(くりき・きょうこ)
1954年、名古屋市生まれ。京都大学在学中に短歌と出会う。
歌集に『夏のうしろ』(読売文学賞、若山牧水賞)、
『けむり水晶』(迢空賞)、『ランプの精』(毎日芸術賞)など。
歌書に『うたあわせの悦び』『現代女性秀歌』『短歌をつくろう』など。
「塔」短歌会選者。読売新聞、西日本新聞の歌壇選者。現代歌人協会理事長。



装幀=鈴木成一デザイン室
 


2022.9.1刊
塔21世紀叢書
四六判変型並製/184頁
ISBN 978-4-86272-725-1
販売価格 2,000円(税込2,200円)

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