天上の春の質量いかほどかひかり引つ張りひきがへる跳ぶ
その作品世界のなかでは、空も雲も草木も鳥獣虫魚も、そして作者自身も、
大きくなったり小さくなったりしながら、さまざまに未知の表情を見せる。
ファンタジックな感性とゆたかな表現力をたずさえる、この新しい歌人の
出発に拍手を贈りたい。
──小島ゆかり(帯より)
【歌集より】
空よりもおほきその羽収めたるのちの鴉はちんまりしたり
かなぶんのみどりのからだ死ののちも真夏の陽ざしかつんと返す
めぐりくる人事異動の日のそらは白木蓮の風の十字路
B定食のフライのにほひ踊り場へのぼりくるなり濃きこがねいろ
時ながく家族の会話聴く卓はこのごろ軋む人のこゑにて
【著者プロフィール】
河合育子(かわい・いくこ)
1965年 愛知県生まれ
2011年 コスモス短歌会入会
2014年 桐の花賞受賞
2015年 O先生賞受賞
COCOONの会参加
装幀=東海林かつこ(next door design)
2022.10.10刊
コスモス叢書
四六判上製/208頁
ISBN 978-4-86272-719-0