楠田さんにとっての故郷と家族は生きる基盤でもあり、羅針盤のようなものでは
なかったか。父母の金婚を祝い古稀を祝う、そうこうするうちに己の古稀。
苦労はあっただろうけどほんとうに幸せな人生だったのだと思う。
――沖 ななも(跋より)
【歌集より】
一本の鍼に託さむわが未来今日より五年の学び始まる
父母ありて師あり友ある故郷に帰り来たりて深き呼吸する
恐る恐る水に飛ぶ鴨飛べぬ鴨七羽の子鴨を見守る親鴨
輝きし満鉄時代を語る父かの地を再び踏むこともなく
耐へ来たる限界のごとく噴く桜島の火山灰は朝の風に従ふ
母の味噌に似てると弟の贈りくれし優しさ共に先づ仏壇へ
【著者プロフィール】
楠田清美(くすだ・きよみ)
1944年 旧満州鞍山に生る
1962年 鹿児島高等鍼灸学校に入学
「南船」(主幹・東郷久義)に入会
1977年 「地中海」(主幹・山本友一)に入会
2020年 「熾」(代表・沖ななも)に入会
2023.4.8刊
熾叢書
四六判上製/184頁
ISBN978-4-86272-735-0