令和2年刊行の『無量光』に続く第二歌集
集名「淡雪」は、
淡雪の降りつ地に消ゆ儚きを命と思ひ見つめてゐたり
の一首より採りました。生命、人生は長いようで短い。淡雪が地に至り、
消滅する瞬時、それほどの生ではないかと感じます。穢れなき雪の純白、
儚く消えてゆく程の刻、人の命も、人の人生も短い。美しく生きて終わり
たい。そのような思いで、集名としました。
――あとがきより
【歌集より】
手に届く枝垂れ桜はうす紅の小花を枝に並べ揺らげり
日に幾度時計見ながら動きたる身は秒針に似通ひゐたり
母紡ぎし生糸のやうな合歓の花陰りの中はよりくきやかに
乗り降りの顔を見つめてバス停に姉を探しぬ秋の暮れ初む
昨日のやうな君の死雲ちぎれ離るるごとくひとりとなりし
【著者プロフィール】
昭和15年 福岡県に生まれる
昭和62年より「NHK歌壇」等に投稿
平成27年 「鮒」に入会
令和2年 第一歌集『無量光』上梓
2023.6.11刊
新書判200頁
978-4-86272-744-2