クロワッサンばさばさたべて白衣からうろこを落とすよう立ち上がる
もがく日々のうた。
医師として、母として、娘として、妻として。
2021年第64回短歌研究新人賞受賞作「窓も天命」を含む第一歌集。
【歌集より】
我のこと何ひとつ知らぬひとと居てつむじきりりと立つ診察室
あらっても洗っても砂がこぼれだす子を産む前の我を見失う
誰ひとり死なない昼もあるようなアスパラを湯に放てば潮騒
きらめかず傷つきやすき肌をもち鱗に生んであげたらよかった
先生と呼ばれるたびに錆びついた胸に一枚白衣を羽織る
【著者について】
塚田千束(ツカダ・チヅカ)
1987年 北海道に生まれる
2016年 短歌結社「まひる野」入会
2019年 第64回まひる野賞受賞
2021年 第64回短歌研究新人賞受賞
まひる野会、ヘペレの会、ランデヴー 所属
挿画=中島梨絵
装丁=加藤愛子(オフィスキントン)
2023.7.7刊
まひる野叢書
四六判ソフトカバー/144頁
ISBN978-4-86272-739-8