鳥瞰的古地図に今をかさねれば町は海辺を覆いかくせり
どの歌にも、
気付かずに過ごしていた日常の隙間を
見せられている感じがある。
名状し難い妙な感覚が呼び覚まされる、というのだろうか。
これまでに出会ったことのない歌が次々に登場してくる──
(佐伯裕子「跋」より)
《歌集より》
真上から見る楠は猿の群れ哭いているような揺れ方をする
まだいるね雀ちょちょちょと地を跳ねて名前を変えた街に住むかい
きみと見た楕円形の部屋すいれんの輪郭のない青がすきです
私の勇気といえばちっぽけな肉ふるわせるこのかやねずみ
ぎゃぎゃぎゃっと叫んでマスクを外したいわれのなかにもいるハクビシン
ジーンズは存外からりとよく乾くたったそれだけのことだったんだ
《著者プロフィール》
山口 青(やまぐち・あお)
京都市に生まれて千葉県習志野市に育つ
2012年 五十代で佐伯裕子氏の短歌講座を受講、作歌を始める
2014年 未来短歌会に入会
本集が山口青 第一歌集となる
装幀=花山周子
2024.1.16刊
四六判上製/240頁
ISBN978-4-86272-757-2