『禽眼圖』につづく第三歌集。
神戸に生まれ、今もその町に住み続ける著者。
阪神淡路大震災前の町の記憶、死者の記憶を呼び起こしながら歌を詠む。
そして自らが歌を詠むことの意味を問い続けている。
≪歌集より≫
階段は途切れて鳥ととびたてば須磨の海ゆく帆船の見ゆ
ぬいだシャツで胸をふくきみ遠ければ海境にたつ檣となる
屋上に鳩舎もちたし紺瑠璃の空にふれたる白鳩あつめ
いつからが死後なのだらう滝壺にまはりつづけるボールのありて
きみの横顔かかへて生きる蜂の死を抱き込みとぢる蓮くらがり
栞=川野里子/榎田尤利(小説家)
装幀=八幡一生[青空テプイ]
表紙絵=森馬康子
題字=山根 亙清
≪著者について≫
楠 誓英(クスノキ・セイエイ)
1983年 神戸市生まれ。
2013年 第一回現代短歌社賞受賞。
2014年 第40回現代歌人集会賞受賞。
第一歌集『青昏抄』(2014年)、第二歌集『禽眼圖』(2020年)
2024.1.17刊
四六判・ソフトカバー/180頁
ISBN978-4-86272-755-8