バベル      吉村実紀恵歌集

一人の人生に

たった一つ与えられた

身体を見つめ、考え、経験を積み、

思いを深めていくその折節に生まれた言葉が、

一行の歌となって杭のように歌集に刻まれている

                 ── 東 直子・栞より





【歌集より】


次の世もおんなでありたし生と死の境に赤い口紅を置く


母となることなく生きてタクシーの深夜割増料金表示


一度きり抱いてくれたら砂になる世界でいちばんきれいな砂に


グローバル時代の共通言語もて人はふたたびバベルに挑む


あこがれを空に放ちし日もありきテンカウント待つのみの敗者に


水の無い世界に至る入口に水の墓碑あり氷柱と呼ばむ




【著者略歴】
吉村実紀恵(よしむら・みきえ)
1973 年 三重県伊勢市生まれ。お茶の水女子大学文教育学部卒
1995 年 同人誌「開放区」に参加
1998 年 第一歌集『カウントダウン』(ながらみ書房)上梓
2001 年 第二歌集『異邦人』(北冬舎)上梓
2014 年 「中部短歌会」入会
現在、現代歌人協会会員





2024.2.1刊  中部短歌叢書
四六判ソフトカバー/212頁
ISBN 978-4-86272-760-2
販売価格 2,000円(税込2,200円)

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