『サラダ記念日』から最新作『アボカドの種』まで。 俵万智自身が、書評家・渡辺祐真(スケザネ)と選んだ220首。オリジナル歌集へのガイドになる80ページ超のスケザネ「全歌集の鑑賞の手引き」付。
著・俵万智 編・渡辺祐真/スケザネ
俵さんの短歌が、時を超えて、いまあなたの心を摑みます。
*全七歌集に加えて、現在入手困難の企画歌集『とれたての短歌です。』『もうひとつの恋』からもセレクト。俵万智さんの「選歌集」では唯一流通している本となります。
おもな収録歌
今日までに私がついた噓なんてどうでもいいよというような海 ──『サラダ記念日』
まだ何も書かれていない予定表なんでも書けるこれから書ける ──『とれたての短歌です。』
デジタルの時計を0、0、0にして違う恋がしたい でも君と──『もうひとつの恋』
百枚の手紙を君に書きたくて書けずに終わりかけている夏 ──『かぜのてのひら』
優等生と呼ばれて長き年月をかっとばしたき一球がくる ──『チョコレート革命』
みかん一つに言葉こんなにあふれおり かわ・たね・あまい・しる・いいにおい
──『プーさんの鼻』
振り向かぬ子を見送れり振り向いたときに振る手を用意しながら ──『オレがマリオ』
別れ来し男たちとの人生の「もし」どれもよし我が「ラ・ラ・ランド」 ──『未来のサイズ』
人生は長いひとつの連作であとがきはまだ書かないでおく ──『アボカドの種』
下記、俵万智「まえがき」より引用
長く歌をつくっていると歌集も増え「どれから読めばいいですか?」と聞かれたりする。スケザネさんという素敵な読み手を得て、選歌集を編めることは、ありがたい機会だ。まず彼が短歌を選び、そのセレクトを尊重しつつ、どうしても私が入れたい歌を加えてもらった。歌集ごとの鑑賞や位置づけも丁寧にしていただいたが「こう読め」というよりは「こんなふうに自由に読んでいいんだ」と受けとめてほしい。そして気に入った歌集があれば、ぜひ手に取ってまるごと読んでいただけたらと思う。そこから先は、あなたセレクト、あなたの鑑賞の世界が広がるはずだから。
著者プロフィール
♦俵 万智 (たわら・まち)
1962年大阪府生まれ、早稲田大学第一文学部卒。86年、「八月の朝」五十首で第32回角川短歌賞を受賞。 87年、第一歌集『サラダ記念日』を刊行。 同歌集で第32回現代歌人協会賞受賞。96年より読売歌壇選者。2006年、第四歌集『プーさんの鼻』で第11回若山牧水賞、第六歌集『未来のサイズ』で第55回迢空賞、第36回詩歌文学館賞受賞。評論では『愛する源氏物語』で第14回紫式部文学賞、『牧水の恋』で第29回宮日出版文化賞特別大賞。
宮崎で毎年開催される高校生の「牧水・短歌甲子園」審査員を務め、2020年には歌舞伎町ホストたちの歌集『ホスト万葉集』『ホスト万葉集 ・巻の二』や、アイドルが短歌に挑戦する「アイドル歌会」に、企画当初から選者として関わった。現代短歌の魅力を伝え、すそ野を広げた創作活動により2021年度朝日賞を受賞。最新歌集『アボカドの種』を2023年十月刊。2023年11月、紫綬褒章受章。
♧渡辺祐真(わたなべ・すけざね)
1992年東京都生まれ。作家・書評家。書評系YouTuberとして活動をはじめ、自身のチャンネル「スケザネ図書館」で、書評や書店の探訪、ゲストとの対談など多数の動画を展開し注目を集める(俵万智出演回は2021年7月6日配信 https://www.youtube.com/watch?v=TR-6-rt7_Pk&t=279s)。2022年4月から毎日新聞文芸時評担当。TBSラジオ「こねくと」レギュラー、TBSポッドキャスト「宮田愛萌と渡辺祐真のぷくぷくラジオ」パーソナリティー(2024年3月現在)。著書に『物語のカギ』、共著に『吉田健一に就て』『左川ちか モダニズム詩の明星』など。最新の編著に『みんなで読む源氏物語』がある。