自ずと目に入るめぐりの自然や人間、
生活の拠り所としている図書館、そして二十歳離れた兄のこと。
老いの日々を淡々と詠みながら、深い思惟とほのとした明るさを感じさせる第五歌集。
【歌集より】
枯枝のてつぺん鳶の一羽ゐて左右に頭を打ち振れるのみ
鳶見つつ何時とはなしに湧きいづるこれの力や一歩を踏みだす
空はるか鳶を見やればしばしばも雲にまぎれてしまふときあり
わが庭のあしたの空に鳴き交はす四羽の鳶や手をかざし見つ
【著者略歴】
府川富造(ふかわ・とみぞう)
1944年 神奈川県に生まれる
1965年 「アララギ」入会
1998年 「短歌21世紀」創刊に参加
2020年 「青南」入会、現在に至る
2024.10.5刊
四六判ソフトカバー/180頁
ISBN978-4-86272-786-2