「人は悲しみを知って豊かになる」とは
先師松村英一の言葉である。
一時期、遠目にも痛ましい姿を垣間見たが
「歌は自らのためにある」という本然に著者は蘇った。
繊細な感覚と才のきらめき、更なる深化を約束するような第二歌集である。
── 永井正子・「帯」より
《歌集より》
風に触れ光に触れて萌ゆる芽のごとくありたし吾のこころも
歩み入る古きみ寺にかへるでの重なる影が苔にさ揺らぐ
「真珠湾は伊勢にあるの」真顔にて問ふ若者にわが振り返る
糠雨に暮れゆくタベニ人目を産む躊躇ひを娘の言へり
さやさやと羽を広げて誘へる応挙の孔雀われを包めり
《著者プロフィール》
堀井弥生(ほりい・やよい)
1957年(昭和32年)奈良県生まれ
2010年(平成22年)「国民文学」入会
2015年(平成27年)「国民文学」同人
2016年(平成28年)第一歌集『大和春光』上梓
現代歌人協会、日本歌人クラブ会員
2025.6.20刊
国民文学叢書第616篇
四六判上製/160頁
ISBN978-4-86272-802-9