「鳥や蛍などを題材としつつ、
夢か現実か分からない不思議な歌が生み出されている。
居なくなってしまったもの――不在なる者――の気配が漂っている。」
吉川宏志(解説より)
《歌集より》
ガルガンチュアの講義を隅で聴いてゐたシダーの木椅子に凭れかかつて
麻布にくるみし鶴の胸肉は月のごとくにひんやりとして
灰桜だと思ひけり骨壺の木箱の角が乳房を突つく
はなひらが湧きたつほどに冷ゆる昼母なき部屋に母をさがしぬ
《著者プロフィール》
植田珠實(うえだ・たまみ)
1949年 東京生まれ、奈良育ち
ニューヨーク州立大学卒業
第一歌集『梟を待つ』。句集『月のこゑ』
短歌結社「山の辺」代表
2024.3.19刊
四六判・上製本/176頁
ISBN978-4-86272-759-6