退職して妻との暮しも定まり、時はゆるやかに流れてゆく。
身めぐりの自然から日々の喜びを得て、視線はおのずと光の射す方へと向かう。
『乗換への駅』につぐ豊饒の第六歌集。
《歌集より》
芽吹かざる一樹を残し若葉へと加速してをり鎮守の森は
花咲く日花の散る日に病みゐたる亡き母顕たす今年の桜
をだまきの花咲きたりと妻の呼ぶまた美しくめぐる七曜
背丈越す向日葵一花この鄙に住み古りてなほ夢掲げたり
いつの日の君の思ひか形見なる本より紅葉はらり舞ひ落つ
《著者プロフィール》
昭和12年、和歌山県生れ
昭和38年「水甕」に入り、加藤将之に師事
平成4年より選者(〜現在)
昭和58年より朝日新聞和歌山版歌壇選者(〜現在)
平成2年、和歌山県歌人クラブ会長
平成26年、日本歌人クラブ近畿ブロック長
現在、日本歌人クラブ名誉会員。現代歌人協会特別会員。和歌山県歌人クラブ顧問
歌集に『午後の歌』など5冊
2024.12.13刊
四六判上製本/212頁
ISBN 978-4-86272-791-6