あやとり   千種創一歌集

人と人を結ぶ糸は永遠だ、って錯覚してしまうのはなぜだろう。
人々の消えゆく言葉と記憶を書き留める、
『砂丘律』『千夜曳獏』に続くコンセプチュアルな最新歌集。

戦争体験者への取材に基づく連作「つぐ」や、尾張藩主の御巡覧と伴走した「知多廻行録」(アートサイト名古屋城2024出展インスタレーション作品)を含む265首を収録。



【収録作品より】

あなたは僕の幽霊に、僕はあなたの幽霊に、雪の手紙を書いていたんだ

言葉ってすっごく永く香るから いま潮風に手帳ふくらむ

伝えねば、否、伝わるような苦痛であってたまるかの、花、渡さねば

生き死にの平野の果ては玻璃の街、月の光をときんときんに散らして

橄欖樹(オリーヴ)の太さは雨の豊かさを ほろんだ竜はかなしかったね

もう何も奪わないでくれ 震わせて真冬に洗うひまわり、造花の

君の名に海のあること 風力1、曇りの南の港に覚めて

港まで肩にもたれて ああ、僕ら海や言葉になりたかったんだな



【著者プロフィール】
千種創一(ちぐさ・そういち)
1988年 名古屋生まれ。
2015年 歌集『砂丘律』。
2016年 日本歌人クラブ新人賞、日本一行詩大賞新人賞。
2020年 歌集『千夜曳獏』。
2021年 現代詩「ユリイカの新人」に選出。
2022年 詩集『イギ』、ちくま文庫版『砂丘律』。
2024年 アートプロジェクト「アートサイト名古屋城2024」参加。



2025.4.7刊
四六判変型上製/198頁
ISBN978-4-86272-798-5
販売価格 2,500円(税込2,750円)

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