羊を一匹ひつじを二ひきひつじをさんびきひつじをよんひき
2021年刊行の『遣らず』につづく第五歌集。
これまでは歌集刊行ののち、長い空白が置かれたが、今回は前集との「連星」とも言える歌集である。
「〈羊が一匹ひつじが二ひき……〉眠りに誘う呪文の「が」を「を」に替えてみる。とたんに「存在」
だったものが「対象」に変わる。たったひとつの助詞が揺らぐそれだけで状況は変わってしまう。
そんな危うさといつも隣りあわせている。」 (あとがきより)
《歌集より》
なんだこのおほきな足どこにもゐる人なんですが気になりますか
あいつださうだあいつださうださうださうだあいつださうだあいつだ
学歴つてあんたジープから投げられたペンを拾ひはしたけどな
おほきなものを匿すのにここがつかはれる森よりはちひさいもの
ゆふづきといふ言葉はありますか争つてゐるうしろのそらです
《著者プロフィール》
1936年、岐阜市に生まれる。同人誌「斧」創刊に参加。
初の歌集『顔をあげる』(1961年刊)は現代の口語短歌のさきがけといわれる。
第二歌集『前線」(1976年刊)、第三歌集『振りまはした花のやうに』(2006年刊)、
第四歌集『遣らず』(2021年刊)のほか、短歌研究文庫版『振りまはした花のやうに』
(併録『顔をあげる』『前線』)(2022年刊)がある。
2025.9.25刊
A5判並製/220頁
ISBN978-4-86272-817-3