第35回 現代短歌評論賞受賞者による待望の第一歌集
今にも声を発しそうな曇天の紫陽花、そこに作者が祈うものも
死者や生者への思いかも知れない。 大塚寅彦「解説」より
2024年の春ごろまでに結社誌や総合誌などに発表した作品を三部構成で収録。
第一部は生きづらさを抱えている人に寄り添うことを願い構成したパート。
第二部は作者自身の趣味を前面に出し、歴史やアニメ、
文学や生き物などを中心に、主題制作を試みたパート。
第三部は生と死がテーマとなっている。
【歌集より】
夏雲の亡霊めくをうつうつと仰げばさびし紫陽花の辻
吃音の韓非子かなしコミュ障のわれに夕立降り止まざりし
細胞の悲鳴が鼓膜の隅つこに堆積されてゆく水曜日
むらさきの花影ゆれて虫めづるVTuberの配信はじまる
ドストエフスキーのひげを束ねたら魔女の箒が出来るだらうか
火葬場の風にさらさらたらちねの母の燃え殻ひかりつつ舞ふ
装幀=花山周子
【著者プロフィール】
1989年 滋賀県生まれ
2012年 早稲田大学文化構想学部卒業、中部短歌会入会
2015年 結社新人賞受賞
2017年 現代短歌評論賞受賞
2022年 結社賞受賞
現在、フリーランスでITエンジニアの仕事をこなしつつ、
YouTube で万葉集の歌を紹介・解説する動画を投稿中。
2025.9.25刊
中部短歌叢書
四六判並製/160頁
978-4-86272-811-1