生まれ育ち、今も暮らす秦野の地。
郷里の歌人、前田夕暮の研究に費やした生活が区切りを迎え、
二十余年ぶりの歌集を編む契機となった
──『実朝塚の秋』『猫坂物語』に続く第四歌集
在職していたキャンパスの風景や折り折りの感慨、入院手術の体験、コロナ禍の
日々、定年が近づく日々の想い、そして定年後の丹沢山麓での暮らし、九十代の
母の介護の日々などを詠んできた。そうした中で、ありし日の回想や身のめぐり
を越えた領域へのうながしを詠むこともあった。 (「後記」より)
【歌集より】
花ふふむ実朝塚にゆくりなく園児ら入り来ぬ声を撒きつつ
さへづりが川すぢづたひに遠のきて丹沢山麓春ならむとす
つどひ来し夕暮の郷里の公民館まどに阿夫利の横顔のぞく
マスクして修行僧らも行き交へり鶴見大本山参道の夏
秋ふかく山かげにひそむ村ありて小滝二ひら流れてをりぬ
【著者プロフィール】
昭和29 年 神奈川県秦野市生まれ。
昭和57 年 「氷原」入会。平成25 年「ぷりずむ」創刊に参加、選者。
歌集『蝶の記憶』『実朝塚の秋』『猫坂物語』。
研究書『前田夕暮研究―受容と創造―』『丹沢の文学往還記』ほか。
現代歌人協会・日本歌人クラブ・日本ペンクラブ会員。
鶴見大学名誉教授。博士(文学)。
2025.9.20刊
ぷりずむ叢書
四六判上製/224頁
ISBN978-4-86272-814-2