退職して妻との暮しも定まり、時はゆるやかに流れてゆく。
身めぐりの自然から日々の喜びを得て、視線はおのずと光の射す方へと向かう。
『乗換への駅』につぐ豊饒の第六歌集。
歌集より
芽吹かざる一樹を残し若葉へと加速してをり鎮守の森は
花咲く日花の散る日に病みゐたる亡き母顕たす今年の桜
をだまきの花咲きたりと妻の呼ぶまた美しくめぐる七曜
背丈越す向日葵一花この鄙に住み古りてなほ夢掲げたり
いつの日の君の思ひか形見なる本より紅葉はらり舞ひ落つ
2024.12.13刊
四六判/212頁
ISBN978-4-86272-791-6