作者は美術館や博物館で勤務しながら、文芸家のおびただしい遺品と向きあい対話してきた。
そこで知り得た人生や時間に対する思いが歌にも大きく投影しているようだ。
両親や夫との絆も流れる水との触れ合いのように淡々とうたわれる。
淡くはあるが浅くはない。
一つの象(かたち)を印象づけ存在させることばの力をもっているからであろう。
馬場あき子・帯
🫧歌集より
古びたる蛇口がひとつ夕暮の壁にありけりここはいづこや
クリームと苺の菓子がよるべなき世の雑踏のむかうに並ぶ
逝く前に「雪か」と問ひし晩き夏まぼろしの雪その脳に降る
器みな生まれながらに飲食(おんじき)を容るる悲しみにほの明かりせり
栗剝けば遠野の会話思ひ出す 座敷童は孫だと思へ
❄️栞
小玉 武 |はっきりと見て。情感ゆたかに詠む
川野里子|祈りの小部屋を持つ人
装幀=花山周子
【著者プロフィール】
(やましろ・ちえこ)
1957年 東京都豊島区生まれ
地方公務員を経て、地域博物館に学芸員として勤務(2023年退職)
1999年 第15回朝日歌壇賞受賞
2019年 歌林の会入会
2024年 『檀一雄の従軍日記を読む』(新潮社図書編集室)出版
2026.6.30刊
かりん叢書
四六判変型・上製/172頁
ISBN 978-4-86272-829-6