亀さんゐない   池田はるみ歌集

*第19回前川佐美雄賞受賞!


流れていったいくつもの歳月が、
いっぽんの太い縄へと編まれ、
そしてまたやさしくほどかれてゆく。
ゆたかなさびしさを連れて——。

『正座』から五年、
池田はるみ第七歌集!
2015年から2020年の作品479首を収録。


【歌集より】

陽にむきて都こんぶを嚙みをればすつぱいままのさびしさが来る

亀さんの手押し車が来なくなりまた夏が来たくすのきのそら

橋の上のベンチに爺さまふたり居て川底みてる風がとほるよ

自らのおよぼす力のすくなきを解放といひ無力ともおもふ

「歳月」はなにも裁かずゆきたれば なるやうになりならぬものあり

このビルの傾斜のすごき階段を九十歳が上りてゆきぬ

夢のなか漂ふやうな傘がゆき晩秋を過ぎ初冬となりぬ

相撲つて裸で濃厚接触のスポーツなれど歴史は深い


装幀=花山周子


四六判上製
ISBN978-4-86272-647-6
販売価格 3,000円(税込3,300円)

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