〈歌集より〉
あなにやし高枝の梅咲きそろひまぶしきかなや画室の隅も
過ぎゆくは歳月ばかり素描より花かず増やし夏椿描く
水牛は眼をとぢて憩ふかな身のうち過ぐる水流を得て
絵のうへに座りて薄暮まとひたる躰のままに街に出でゆく
伸びらかな噴水の秀を乱したる風とほり過ぐまた明日が来る
抽象と具象のあはひ迷ひたる絵筆は雲の縁をはしりぬ
「この一見して大人しそうな文語の歌人・浅岡博司を、私はその目の確かさによって、その思惟の深さによって、何より人間の味わいによって、しずかに長く尊びたい。」
坂井修一(解説)
かりん叢書
2020.6.15刊
上製四六判/236頁
ISBN978-4-86272-643-8
C0092 ¥2500E