〈歌集より〉
母逝きてのちに巡りしこの秋のなにも急くなき時間あたらし
にじ、にじとよぎる登校の子らのこゑ虹の彼方の未来広かれ
十分に咲いたのだらうか沙羅の花みち辺とほれば想ふおとうと
ハンドルの向かうに光る凪の海じぶんに折り合ひつけてゆく道
第一歌集『雪明り』から八年、自らを見つめる深い眼差しと、職を退いた後の心境の伸びやかさが印象的である。弟への挽歌「沙羅の花」一連は絶唱といえる。
2020.9.26刊
国原叢書
上製四六判/196頁
ISBN978-4-86272-648-3
C0092 ¥2500E