—— いのちよりも 言葉を ——
四肢の自由を奪われながら
かろやかに、しかし勁く気高く、
病床から自己をみつめつつうたう、
379首を厳選
考えられる最大のハンディを背負いながら、嘆かず、絶望せず、常に前を向いて生きている。
……手が使えないから、原稿が書けない。脳裏に到来した歌を絶大な記憶力で記憶して、
かたわらの人に書き留めてもらう。……
『シジフォスの日日』はそのような経緯によって成った、ほかに類例がない歌集である。
小池光(栞より)
【歌集より】
今日手術しなければ死ぬと言ひ切られ夜桜の下{もと}運ばれてゆく
三十一回五十音図を読む友に頷きながら歌は生まるる
痰だけは正岡子規に負けるまじ日に三箱のティッシュを空ける
一年半わが傍らに友がゐて夜鶯{ナイチンゲール}と心中に呼ぶ
動かざる白き繭ひとつ横たはり遠き夜景と対峙してをり
栞=穂村弘/酒井佑子/小池光
装幀=菊地信義
*2018年4月4日 朝日新聞(夕刊)の文芸欄にインタビュー記事が掲載されました。
*2018年3月10日 東京新聞(夕刊)「土曜訪問」にインタビュー記事が掲載されました。
2017. 12.8刊
四六判上製/240頁
ISBN 978-4-86272-563-9