〈歌集より〉
硝子戸を背に立ちをればとんとんと陽に敲かるるやうな冬の日
昨夜おそく脱ぎたるままの黒色のロングブーツがガックリ折れて
ひとしきり紋白蝶は野に遊び空の奥処にまぎれてゆきぬ
穏しかる三十年とは思はねどみなやはらかき教へ子のこゑ
坂下るくだりつつ見ゆるものもあり白き芙蓉にうごく夕風
みづからの影を踏みつつ草を引くかかる平凡を繰りかへし来つ
「さしたることのない日常でも、森さんにかかると一首の歌になる。
人生を丁寧に生き、丁寧に歌っているといったらいいだろうか。」
(大下一真氏・帯文より)
まひる野叢書
上製四六判/200頁
ISBN978-4-86272-638-4
C0092 ¥2500E
定価:本体2500 円(税別)