梅、うつ木、紫陽花、木瓜、ブルーベリー、百合、野薊、まくわ瓜、
蜀黍、茄子、南瓜、辣韮、ふじ豆。
中村久美子さんはこんな夏の青の中にいる。衒わない日常の歌には
たしかな生のリズムがあって、下句に弾むユーモアや意気が鮮やかだ。
農作業の歌にも闘病の歌にも、颯々と自分の足で立っている潔さが
ある。
──米川千嘉子(帯より)
【歌集より】
草畑にラッパ飲みするぬるき水 青空もともに咽をはしる
蛸にふれ海鼠つかみてにっとする孫も水を得た小さな魚
不夜城のチッソの灯り対岸を美しと想いし五歳のわれは
故も無く戦禍に消える命あり五錠でつなぐわが命あり
夕陽うけ山のねぐらへ飛ぶ鶴の影絵ごときも杳き日のこと
2022.10.10刊
四六判上製/260頁
ISBN978-4-86272-723-7