遍照の空   新井敦子歌集

      追憶の煙となりて消えてゆくいずれは我も遍照の空



【収録歌より】

モノクロのひまわりめくれば鮮やかに生徒をよみがえさせる学び舎

箸渡しを厳しく諫めし父の骨を箸で受け取り壺へ納める

あのときの笑顔遺影におさまりて今も輝くダイヤモンド婚

あったかもしれない出会いを描いても淡く消えゆく夏空の虹

いつ見ても六時四十四分の実家の時計黄昏のまま

ガザ地区の誰も乗らない観覧車取り残されて閃光浴びる



第一歌集を手渡すことが出来なかった父、その父を追うように亡くなった母。
両親への深い哀悼の思いと、
退職後に携わったフリースクールや学び直しの学校で出会った生徒達へ、
それぞれが幸せな人生を咲かせることができたら、との思いを籠めた第二歌集。



・・・ある時空を見ていると、「遍照の空」という言葉がふっと浮かびました。
第一歌集が完成する前だったにもかかわらず、第二歌集のタイトルはこれにしよう、と決めました。父と約束を交わすような思いでした。

                             (「あとがき」より)



【著者プロフィール】
新井敦子(あらい・あつこ)
1960年 神奈川県茅ケ崎市に生まれる
早稲田大学教育学部国語国文学科を卒業後 神奈川県立藤沢北高校に赴任
大清水高校・藤沢養護学校・有馬高校・大船高校を経て 現在は相模向陽館高校に講師として勤務
「たぶんかフリースクールよこはま」(認定NPO法人 多文化共生教育ネットワークかながわ運営)代表
1999年 かながわ・メッセージ 絵本『月桃の風車』(武田出版)上梓
2021年 歌集『未来へのバトン』(短歌研究社)上梓
2022年 歌集『消えがての夢』(著者 鈴木泰恵・短歌研究社)編集
2023年 句集『咲ききって』(著者 井上榮子・金雀枝舎)編集
氷原短歌会・鼓笛短歌会・松林短歌会入会



2025.7.16刊
鼓笛叢書
四六判上製/192頁 C0092
ISBN978-4-86272-810-4
販売価格 2,500円(税込2,750円)

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